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Parallel Novel
「ハリケーン再上陸。春は微笑みと共に」
Chapter<10:みすてりあすグリーン。>

 3講目の終了を知らせるチャイムがキャンパス内に響いていた。

 「っと!。問題の4講目だね。教養の方はあかねさんが再履修届を出しておいてやるから。恭介、ちゃんと専門の方へ顔出しておきなよ」

 「…あかね。まどかが帰国したら、合格祝いやろう。遅くなっちゃったけどさ、アレって結構、嬉しいものなんだ…」


>>僕とまどかの合格祝いは賑やかなものではなかった。3人でいられなくなってしまった夏から約半年。ひかるちゃんの手前、僕とまどかの合格を祝ってくれる人など、居ないように思えていた。でも、アバカブのマスターが閉店後、僕らだけを招待し、祝ってくれたんだ。

>>マスターから『ささやかだけど、僕から2人への合格祝いだよ』とプレゼントされた真新しい1対のショットグラス。そのグラスへ特別な日には特別なお酒でねと、マスターが注いでくれた、深い緑色をした液体は、“absinthe = アブサン”という幻の魔酒であり。その昔、ゴッホやピカソ、多くの芸術家が愛飲したそうで、現在は製造はおろか所持することすら禁じている国もあるという、なんとも、ミステリアスなベールに包まれたお酒。どうしてそんなものがマスターの手元にあったのか、やはり、謎なのだけれど。

>>コツン、コツン、コツン、3人のグラスがおめでとうを交わした後、鮎川まどかはグラスに鼻を寄せたまま、口を付けようとしなかった。その時、僕は見た…。彼女の大きな瞳から、ぽろぽろと大粒の涙が零れ、その透明な滴がアブサンに落ちて、乳白色に変わるのを。『あれ?、あれ?』、彼女は彼女の涙に理由を訊いていたっけ。

>>合格発表の日、鮎川まどかは自分の番号を見つけても、泣かなかった。僕の目が少し潤んでいるのを見つけて、「あ〜、春日君。花粉症デビュー?」なんて戯けて、心地よさそうに笑って見せたのだ。

>>「さー、どーしてだと思う?」僕の問いかけに鮎川まどかはこう切り返した。今でもあの涙の理由はよくわからない。でも僕には、あの涙はきっと、香りも苦味もこの上なく強烈なアブサンに、負けない、鮮烈な意味を持った涙だったと思えるワケで。


 「んーーーーーーーーー?」

 「な、なんだよ?」

 「アンタ、まどかちゃん以外の女にちょっかい出してないでしょうね?」

 「なな、何言ってんだ急に。そんな事、出来るワケ無いだろ」

 「まーさーかぁ、合コンなんかに参加してないでしょうね?」

 「し、してない。…いや、1度した。あ、2度かな?。はは…ははは」

 「ふーん…………恭介、アンタ気を付けた方がいいよ」

 「なにを?」

 「オ・ン・ナ」

 「?」

 「…ぷっ、あー心配いらないや。アハハハハ」

 「????????」

 「アンタ、もしかして、“いーおとこ”かもよ?」

 「オレが? “いーおとこ”?」

 「冗談だよ。またマジになってんの、バーカ」

 「あかね!」

 「サンキュ、恭介。合格祝い、楽しみにしてるよー♪」

>>さんざん悩んだあげく、自分のやりたいことすら自信を持って決められない僕が“いーおとこ”であるハズなど無く。あかねの助けがなかったら今頃、考えるのも恐ろしい状況に陥っていたワケなのであり。だから、あかねがどいういう意味で言ったのか…と。


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※ABSINTHE:アブサン。文中で恭介が説明している通り、2人の大好きなお酒の一種です。水を入れると白濁する特徴あり。リアル・アブサンは苦み強く、濃い緑色、酔いの道先で『妖精』と出逢えるらしいです(笑)。現在市場に出回っているABSINTHEの一種、ABSENTEはフランス語で「彼女が居ない」という隠意を持つそうで、彼女に与える前には心変わり(色変化)しないようにロープでふんじばっておきましょう(Merci beaucoup CyberFred-san)。作者はもちろん、“リアル”物を見たことも飲んだこともありませんので、問い合わせはご無用に願います。

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