あのホテルよかったな、くっだらない授業、どうしようバイト辞めようかな、あと1年か、合コンにアイツ来るかな、オヤジのオイニーとれなーい、羊が3匹、自動車学校遅れちゃうよ、バリ島でバリバリやりーの、やっぱシャネルよね、退屈、キスマーク付けやがって、男なんか、早く結婚したーい、あーあ今日は化粧のノリがいまいちよねー、葉っぱほしー、もう死のう、エッチしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
「ぁぁぁぁぁぁあああああ、うっっせーっぇぇぇぇぇんだよぉぉっ!」
「春日あかね君!。だいじょうぶかね?」
ハ…。
「あ、すみません、居眠りしちゃって、うなされちゃいましたぁ〜」
あかねの短大生活は酷いものだった。テレパスは短大1年の終わり頃に覚醒した。厄介なスキルだった。ある日突然、弾いたこともないピアノの前に座らされ、さあ、アシュケナージの代役を務めろ、幕を開けるぞ、と宣告を受けたようなものだった。生まれつきテレパスが備わり、成長に合わせコントロールすることを覚えたカズヤと違い、あかねの場合は成長してから覚醒したため、コントロールできるまでに時間を要したのだ。その間、あかねが少しでも気を緩めると周囲に渦巻く様々な想いが流入してきては、あかねの意識空間、つまり心を土足で踏みにじった。流入を食い止めるため、気を張り通しだった。もはや、限界は見えていた。
コントロールできた頃には短大の友人達は去っていた。あかね自身も短大の友人達から身を引いた。自分は汚れてしまったと思った。あかねに残されたのは、ただ、何かに夢中になること。それが受験勉強だった。やり直してみたかったのだ。取り戻したかったのだ。恭介、まどか、ひかる、…自分も輝いて見えた季節を。恭介達が在籍する大学に超常現象研究室があるのは知っていた。そこで超能力者の研究をしていることも。受験の動機は確固たる再生への望みだった。
受験勉強中、あかねは頼りにしていたことがある。それは、いつの日か罵詈雑言を一身に受け止めていた鮎川まどかの気持ち。身悶えするような、切ない、でも、芯は微塵も揺らがない、暖かな…感覚だった。
「お姉ちゃーん、電報だってさ。はい!」
「あ、サンキュ」
「どうしたの?。みないの?。僕が読んであげようか?」
「いい!自分で見る」
ヨコハマカイコウ ミライヲツカメ
「?、なに泣いてんの?。お姉ちゃん。誰か死んだの?」
「カ…ズヤ、あ、んたテレパス使え…ば?」
「ヘンなお姉ちゃん。笑いながら、泣いてやんの…」
|