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Parallel Novel
「鮎川まどか。キミと歩く5月」
Chapter<6:そんなこんなの前日で。>

 昨晩の睡眠は満足できるものでなかった。今日は昼明け、3講目からのスケジュール。鮎川まどかは2日前、春日恭介が早川ミツルと遭遇した付近を歩く。昨日より湿気を含んだ5月。彼女は首を五月蠅そうに振って、髪のウェーブにまとわりついた空気を解き放った。

 「よぉ、まどか」

 スターのBMWはよほど、この場所がお気に入りのようだ。助手席に春日あかね曰く、“最近売り出し中のなんたら”を乗せちゃったくらいにして、今の彼はフォーカスなど怖くもないらしい。

 「髪型変えて、何かあったのか?」

 「別に。スターさんはお仕事しないで彼女とドライブ?。いーご身分ね」

 「まぁ、そう突っかかるな。どーだ?。調子は?」

 「まぁまぁ、ってトコ。じゃ、あたし講義があるから、バイバイ」

 「ちょっと待てって。お礼くらい言ってくれてもいいんじゃないか?」

 「お礼?」

 「なんだ…まだ、効果が現れてないのか…………」

つかつか。ぐいぃ。

 「何の効果?」

 「み、耳も一段と、冴えてるじゃないか…」

ぎゅぅぅ。

 「は、放せ、い、言、から…」

 まどか襟締め。一本!。

 

>>こーんな事になってたので。<<
(ニューウインドで開きます)

 

 「…と、いうわけだ。どうだ?」

ドガッ。

 「わ!。何するんだ」

 「今度、恭介にデマカセ吹き込みやがったら、こんな…こんなモンじゃ、済まないよ!!」

 「おい、まどか。ちょっと待てよ。おいってば!。…なんだ、アイツ…せっかく気を利かしてやったのに。そんなに怒る事なのかぁ?。あ〜ぁ、また、ヘコんじまったじゃないか…」

 窓枠から乗り出してBMWのドアに降りかかった災難の痕跡を確認する早川ミツル。彼にとって、この周辺は鬼門に違いない。先日だって、“あの凶悪なオンナ”にやられ、レストアしたばかり……………

 「なるほどぉ、そーゆー事だったんだな♪」

 「わぁ!春日のイトコ!」

 「スターさんは、まどかちゃんを狙ってるんだ?」

 「ち、違ぁ〜う!。俺はアイツの、鮎川まどかの才能に惚れてるんだ!。アイツの音楽は春日への想いから生まれてくる…磨きを入れてやりたい…………そう、思ったまでだ」

 「んで、蹴り、入れられちゃったワケね」

 「そーゆー事。俺に下心があるように見えるか?」

 「全然、無いとは言えないだろ?」

 「………………………」

 全然無い…いや。
 早川ミツルの目線はハンドルの曲線の上で停止した。彼の記憶に焼き付いているシーン。今は距離を置かなければならなくなってしまった恋人とのカット。

 『へっ、俺は純粋なモンに結局、全然、縁がないんだよ。シオリ、これが…俺の正体さ…わかったろ?。節操が無くて、オマエを幸せにするとか抜かしておいて…』

 『違う!。カズト!。全然なんて事…違う…よ…』

 

ガスッドガッ。

 累積合計4発。鮎川まどかを追って走り去る春日あかねがBMWのドアめがけ2発、蹴りを追加したのだ。早川ミツルは衝撃音に眉をひそめた。が、彼はあかねを呼び止めはしない。いいんだ。車なんてリペアーだろうがレストアだろうが、すればいい。修復できない、どうしようもない事を悔いることに比べたら、安すぎる買い物…痛くも痒くもない投資………………フッ。

 「俺は…あきらめないぜ」

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 まどかの捨て台詞: 『ピックのまどか節』、健在という事で。

 早川ミツルの諸々: カズト=和人(早川ミツルの本名:早川和人)はシオリ=(島津しおり)と「その後」、距離を置かなければならない関係になっている、それによって、彼を他人に、「筋金入りの女ったらし」に見せている彼のせつな気な真実が作られた…という設定にしてみました。

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