Top/This site/Animation/Manga/ParallelNovel/Links/
Parallel Novel
「ハリケーン再上陸。春は微笑みと共に」
Chapter<7:その後。HIKARU>

 「あかね君、受験勉強は…いいのかい?」

 「あたしは、いーんです。短大コースへはスライド式だから、内申書で決まり!なんですよ」

 「ほぉ?。はは、小松君達と同じだね」

 「…………マスター。あたし、自分の事は棚に上げちゃって、…お節介だなーって思うんだ」

 「そう…でも、他人に何かをしてあげたいって思う事は、自分に何かをしてあげたいって思う事と、さほど遠くないのかも知れないよ」

 「自分にしてあげたい事…自分に…ねぇ…」

カラン

 「遅くなっちゃってごめんなさ〜い」

 「ひかるちゃん。今日の舞台リハーサルはどうだった?」

 「今日もバッチリ、チリチリ〜。だぁーいぶ、上達したんですよぉ〜」

 「主役をハるんだもんネ。その意気、その意気!。あ、そうだ……はい。“コリー・ハート”ダビングしといたよ」

 「うれぴー。こんな、ひかるのために感謝感激ですぅ」

 「いーのいーの、暇なんだから受験生は。って、アタシは、か?。アハハハ」

 「きゃははは。勉強しなくて、だいじょ〜ぶなんですかー?」

 「ぜーんぜん、平気!。何処かの誰かと違ってアタシ…………あ」

 「あ、あかねさんってばぁ、気ぃ遣っちゃってぇ〜。ひかるはこぉ〜んなに元気ですよぉ。コーヒーお代わり、私がサービスしちゃいます!」

 「うん」

 あかねは知っていた。ひかるがあの2人と鉢合わせないよう、登校下校時間をずらしていることを。3人が3人でいられなくなって、それでも、3人は同じ学校に通わなければならない。学内で3人が、ゴシップ好きな連中の格好の餌食になっている事は小松から聞いた。その様子を思い描くと胸に苦い物がこみ上げてくる。“あの”、小松や八田が真相を知らぬまま、でも、3人をかばう側に回っている事が唯一、胸の休まる材料なのだ。

 アバカブに居ても、3人が顔を合わせないようにしている事は露骨にわかる。檜山ひかるが来店、もしくはバイトしている時間帯に電話が鳴る。マスターが『今日は間に合ってるんだ、横浜の方の景気はどうだい?』と返事をするとき、電話先には春日恭介か鮎川まどかがいるのだ。

 壊れて2度と揃わないパズルのように、3人は、3人に関係する人間も空間も、ばらばらになってしまっている。そう、あかねには感じられていた。こんな状態がいつまで続くのだろう?。少なくともあの2人が高校を卒業するまで、いや、もしかしたら永遠にこのままなのかも知れない。アバカブの外はすっかり秋。太陽の光線が、日を追う毎に衰えてゆく季節。コーヒーには砂糖もミルクも必要なかった。

 「逃げ道…なし…………か」

 

Previous /P-NList / Next

※コリー・ハート(CoreyHart):カナダのRock'n'Rollシンガー。ルックス良し。切な気なハスキーヴォイスと透明感溢れるサウンドが女の子に受けてました。日本人の彼女がいたとかいなかったとか。

※内申書で決まり:あかね、小松八田コンビはスライド式でそれぞれ短大、大学へ進学したという設定にしました。

Parallel Novel
Top/This site/Animation/Manga/ParallelNovel/Links/