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Parallel Novel
「その少女。かげろうのむこうで side B」
Chapter<11:心ひみつ同盟>

 春日恭介が杉教授の寝起きの悪さに手こずっている頃、杉ひろみと鮎川まどかは研究室にいた。2人は恭介が仕入れてきたアバカブ・ブレンドを一口、すすったところ。

 「あ。このコーヒーおいしい。コクも酸味も絶妙ね」

 杉ひろみの感想を聞き留め、鮎川まどかは軽く吹いた。

 「あら、何かおかしかった?」

 「そのコーヒーを初めて飲んだとき、教授も同じ事を言ったの」

 「おじさまも?。…………そう…」

 杉ひろみの瞳がコーヒーの褐色へと落ちた。鮎川まどかにはひろみの表情が柔らかく微笑んだように見えた。ひろみはコーヒーに視線を預けたまま、語りかける。

 「鮎川さん?」

 「はい?」

 「手短に言うような、事ではないんだけど…聞いてくれる?」

 「ええ」

 「わたしね、貴女と同じように恭介クンが能力者だって知っているの」

 「!」

 「でも誰にもバラしたりしないと誓うわ。もちろん、おじさまにも内緒。だから安心して」

 「う、うん…」

 「それともう一つ。貴女にわたしの正体を知っていてもらいたいの。一方的に秘密を握っているのは不公平でしょう?」

 「ひろみさんの正体?」

 そのとき研究室の電話が鳴り、2人の会話を遮った。外線のランプが点灯している。

 「相手は春日あかねさん。用件は春日まなみさんの慰労をかねたバーベキューのお誘い。日取りは明日。場所は湘南海岸。水着必須ね。貴女は“参加する”と答えるわ」

 「……………」

 鮎川まどかは用心しながら受話器を取った。全ては杉ひろみの予言した通りだった。会話を終え受話器をおき、まどかはひろみへ視線を流す。ひろみはコーヒーカップに指をかけ、微笑んでいた。

 「これは、おじさまにも恭介クンにも秘密よ」

 「どうしてアタシに…?」

 「貴女でなければならない、という理由で今は許してくれない?」

 「アタシでなければ?」

 「そう。貴女でなければダメなの。時が来たら全てを話すわ。ただそれがいつになるか、わたしにも判らない。これからの研究次第なの」

 鮎川まどかは瞼を閉じた。彼女には赤い麦わら帽子が見えている。超能力者という運命を背負った彼、春日恭介の苦悶を想像するとき、彼女には1つだけハッキリと言える真実があった。

 「うん、…わかった。ありがとう、ひろみさん」

 「え?。お礼を言うのはわたしの方よ?」

 「とっても大切なこと…逢って間もないのに打ち明けてくれたから。アタシにできることは何でも言って」

 杉ひろみは、鮎川まどかと春日恭介の2人が過ごしてきた時間の密度を感じていた。それは彼女の予想通りだったのだが、実際に鮎川まどかと対峙して、まどかの放出する温度を感じたのだ。それは、ひろみの心に暖かく浸透してくるような温度だった。溜息が漏れるほどに。

 「じゃぁ、明日のバーベキューにわたしとおじさまを誘ってくれるかしら?」

 「ふふ。もちろんよ」

 2人はお互いをもっと気安く、アユ、ヒロと呼び合うことに決めた。昔から良く知っている友人のような、そんな連帯感が芽生えていたのだ。2人に共通する、心の響きに正直な感性が、互いを呼び合ったのかも知れない。

 「ね、アユ。恭介クンは中学一年生の頃の話をする?」

 「ううん。一度もしたことないの。なぁ〜んか隠していそうなんだけどね」

 「そう。じゃ特別に教えてあげる。恭介クンに腹が立つ事があったら、ネタにして絞り上げてやるといいわ」

 

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 ひろみの告白: 鮎川まどかは杉ひろみが超能力者である告白を受けました。時が来るまでは、と口止めされています。ひろみが能力者であることは、恭介や杉教授は知りません。

 アユ、ヒロ: 毎度ベタですんまそん。まどかに気安く呼び合える同性の友人をせめて1人、作ってあげたかったので(お竜はどーした?。き、訊くでない)。以降の作品ではさらに、あかねを絡ませて無敵のトリオを完成させる予定です。

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