ランチの残りに猫が数匹あつまっている。植物があるなら動物もいるのだ。杉教授は芝生の上で横向きに寝ころび、本へ目を落としている。芝生に投げ出された彼の、三つ編みを止めているオレンジ色のリボンに牛柄の一匹がじゃれつき、その横で三毛猫の一匹が鮎川まどかの膝を占領して、毛並みをなぜてもらっている。
「……………」
鮎川まどかは腕時計を見やった。そして、不満げに薄目を開く三毛猫を膝から芝生へと降ろし、立ち上がる。ぱんぱんと白衣に付着した芝をはらいながら視線を教授の背中へと流した。
「教授。そろそろ春日君が来る頃なので、先に降りますね」
「そうしてくれたまえ。私は少々このまま昼寝をする。姪があらわれたらすまんが、呼びに来てもらえるかね?」
「了解しました。では、お先に」
「鮎川クン。あんまり根をつめるなよ。少しくらいレポートの提出は遅れてもいい。それから、私の前でも遠慮せずキョースケ、マドカと呼び合ってかまわないんだからね。楽に楽に」
杉教授は仰向けになると読んでいた本を顔にかぶせた。鮎川まどかはその姿にお辞儀をして、屋上を後にしたのだった。
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