理学棟の屋上でランチをする2人は食後のデザート、鮎川まどかお手製のヨーグルトをスプーンですくったところ。
「そして、パリへ留学ですか?」
「高校3年の夏だ。夏という季節には多感な時期の少女を魅入らせる魔が潜んでいるのだろうな。最先端の研究をしたいと言い出してね。卒業と同時にフランスへ渡って2年と半年、海外の暮らしに慣れただろうかと案じていたら、今度は帰国してこちらで研究をしたいと言う。一度言い出したらテコでも動かないあの性格はいったい誰に似たのやら。私は気の休まる暇がないよ」
「ふふ。教授ったら本当のお父さんみたい」
「キミもそう思うか?。いやいや、友人達からもよくひやかされたよ。けれどアレを見ていると、世間体などそっちのけで世話を焼かずにはおれなかった。人間とは不思議な生き物だね。わっはっはっは」
鮎川まどかの瞳には柔らかい海が満ちている。右手のスプーンは、左手に持った器の中でヨーグルトをゆっくり、撹拌していた。
「きっと、教授と過ごした時間は彼女にとって、かけがえのない時間だった、そんな気がします…」
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