「お!。お嬢ちゃん。その格好、気合い入ってるね」
?
「いいよいいよー。映画の楽しみ方は人それぞれだからね。思いっきりゾクゾクしちゃってちょうだい。さぁ、入った入った。後ろが詰まってるんでね。はいよ。次のお2人さん!」
え?
少女は自分の手が握っているものを見た。
映画のチケットにすり替わっていた。
夏のホラー映画3本無料サービスって────なに?
少女は映画館のもぎりを抜けた、分厚い防音扉の前にいる事に気づいた。自分は学生カバンを持ちマフラーを巻き制服の上にコートを羽織っている。衣類は溶け残ったわずかな雪を乗せ湿っていた。
え"?!
「おや。たしかナインハーフの券を買っていった…。ほう。今日は彼氏とホラーかい?」
もう1度もぎりの方向を見た。
「あ…………………」
そこには高校生ほどに成長した彼の姿があった。隣には、彼がクラスメートに答えていた理想そのものへ命を与えたような存在がいた。2人は少女の横を歩きホールへと入場していった。その際、彼はまったく少女の存在に気づかなかった。
少女は混乱の中でもう一度、手元の券を確かめた。上映日の印刷がしてある箇所へ目線を流した。左手の指を親指、人差し指、中指と順々に倒し、この現状をやっと把握できたのだ。
3年と7ヶ月も経ってる!
ここは未来……………。
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