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Parallel Novel
「その少女。かげろうのむこうで side A」
Chapter<8:わかりたくないキモチ>

 彼の住所へと続く道。少女は男物のごつい傘を盾にして、雪吹きつける冬の中を前進していた。

 《引き返すがよい》

 イヤ。

 《もうよい。オマエの役目は終わったのじゃ》

 どうして?。まだよ。
 やり残したことがあるわ。
 これはわたしの運命で、恭介クンの運命でもあるの。

 《これからは学業に専念するんじゃ》

 確かに成績は下がった。でも、悲観する程じゃない。

 《追いかけてはならぬ》

 たった一言でいいの。
 友達としてお別れを言いたいだけよ。
 それくらいいいじゃない。

 《戒めに逆らうつもりか。心を奪っても、奪われてもならん!。微々たりとも気づかれてはならぬのじゃ!!》


 わかってるわよ!!

 

 

 そんなこと…

 確実だった。彼の家に近づくにつれ雪も風も強くなっていた。歩みを拒み、はねつけるように。けれど、寒さなど微塵も感じていなかった。焼けつくほど彼のことで胸はいっぱいになっていた。もう彼を友達として見送れない自分になっている事が。

 「恭介クン…」

 傘を投げ捨て、コートのポケットから彼の学生証を取り出した。それをキュッと握ると、少女の身体を中心にし、周囲の雪が螺旋の渦を巻きながら、音もなく舞いあがった────。

 《なにをする!》

 お願い!
 時間よ戻って!
 あの日の朝まで戻って!

 雪の渦がかき消えたとき、少女の姿はそこになかった。

 

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《》な声の主: 以降の作品で明らかになります。が、勘の良いヒトにはもう…。
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