どこからどう誰が嗅ぎつけたのか、学内はウワサでもちきりだった。
『ひろみー。ホントのところはどうなの?。春日クンってマジに超能力者だったの?』
もう幾日も彼は体調不良を理由に学校へは来ていない。
『ルックスだけが平均点であとは、赤点は取る、遅刻はする、運動オンチだし、大貧民も弱いし、これといった特技もない、つまり女の子にモテない、極めつけに優柔不断!。恭介クンはどの角度からどう贔屓目に見たって、超能力者なハズないよ』
よくもまぁ言い連ねられるものだと自分に感心した。そして、思った。きっと彼はこのまま転校してしまう、彼にもう会うことはない。その事を深く想うとどういうワケか、こめかみが痛くなって呼吸困難に陥った。その症状は日を追うごとに酷くなっていった。
『あ〜それから、休んでいる春日だが保護者の都合で転校するそうだ。まだ引っ越しは済んでいないようだから、親しいヤツは会いに行ってやれ。連絡事項は以上。オマエら冬休み中にあんまりハメをはずすんじゃないぞ!」
終業式の日。彼の転校は事後報告として伝えられた。クラスのどの席からも別れを惜しむ溜息は漏れなかった。彼はクラスにとけ込んでいなかったというのか。超能力者だと疑われていたままの方が反応があったというのか。その無反応と同じように、彼が在校した半年間が彼にとって無意味なものだったとしたら。別れを告げたいと思うただ1人の友人もいなかったとしたら───。
『あら?。いつのまに薬品棚がこんな位置へ移動したのかしら。おかしいわね…』
校門では雪がちらほら。保健室の方角を向いてごめんなさい。休み明けの再会を誓う声が次々に通り過ぎてゆく。いまごろ彼は引っ越しの準備をしているだろう。底冷えに負けないようにマフラーをぎゅっと巻いた。
このままバイバイ?
─────そんなのダメ。
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