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「その少女。かげろうのむこうで side A」

Chapter<2:いらだちの原因は>

  『ねぇねぇ、春日君の好みのタイプを教えてよ〜♪』

 キャァキャァとさえずる口さがない連中。好奇の瞳で4方を固め質問責めにしている。保健室の簡易ベッドに横たわりながら、その様子は手に取るようにわかった。

 『か、髪の毛が長くって…』

 取り巻きは「それでそれで?」とあおり立てる。  
 珍しい動物はどもりながらこう、答えた。

 『女の子らしくって…』

 彼の理想とする異性はその年頃の少年にありがちな、ゴシップ記事の切り抜きほどに根拠のない、漠然とした女性像そのものだった。その退屈な答えに取り巻きの彼への奇異の眼差しは、急速に興味を減衰させてゆく。ため息達に混じって、彼の好みに該当する女の子の名前を告げている声があった。自分の名前だった。

 冗談じゃない!、と思った。
 やらなければならない事が増えてしまった。
 ますます気分が悪くなって運命を呪った。
 真新しい珍獣の学生証を保健室の壁へ投げつけると、薬品棚の背面と壁との隙間にすべり落ちた。知るもんか。

 決めた。
 もうこのまま教室へは戻らず、早退しよう。

 

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教室の様子: 少女は1階の保健室にいながらにして、3階の教室のようすを感知できるチカラがあるようです。
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