その少年の事情は知っていた。
『怪我なかった?』
だが、これは計算外のハプニングだった。
『あ。お、オレ春日恭介って、いいます。今日、この中学に、転校してきました!』
1時限目が始まってすぐ、気分が悪くなり3階の教室から1階の保健室へ、ひとり階段を降りてゆく途中だった。今日のことが気になり、昨晩ほとんど寝られなかったのが原因に違いない。たぶん貧血。階段を踏みはずすなんてドジもいいところ。
『それでい、いきなり遅刻してしまって、そ、そしたら、キミが、上から降ってきて、』
息が切れてる。汗いっぱいかいて。よほど急いできたのね。
使えばいいのに─────。
『……………あ、あの…じゃ、オレ行くね』
さよなら。お礼なんか言わない。気分悪いの。
ぜんぶ、あなたのせいよ。
あれ?。なにか落として────学生証じゃない。
古い手使っちゃって。
はん!
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