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Parallel Novel
「トライアングルビーツ!オレンジの紋章」
Phase G-6<闇の正体。それぞれの誓い>

 主人公は寝付かれなかった。同じテントの屋根の下、「この線を越えたらたたッ切るわよ」と最近は念を押されなくなった側から、少女の寝息が2つ聞こえている。起こさぬように注意深く身体を動かして外へ出た。少し歩いてテントを設営した森を抜け、草原へ1歩踏み入れる。満天の夜空───。

主人公:『わぁ……』

 ブロウネイルから提供された情報。ターゲットは闇の司祭コマーツ。自ら命を絶ち、禁呪ネクロマンスによってその身をアンデッド化した───アンデッドとなったコマーツは生命力を削る禁呪の代償に影響されず、思うがままに2つの禁呪、ネクロマンスとマインドコントロールを駆使し、聖オレンヂ帝国のみならず今や、近隣諸国をもその手中に収めようとしているという。

主人公:『闇の司祭コマーツ、か…』

 決戦の場面を想像すると得体の知れない恐怖が全身を駆け抜ける。けれど、コマーツに対し、何か胸の深淵で一縷に火照った───衝動のようなものを感じてしまう主人公だった。

主人公:『オレは一体、何者なんだ…コマーツと何か関係があるのか…』

 けれど、今は深く考えずにいよう。そう自分に言い聞かせ、きびすを返す主人公。再び森を歩きテントが見えた。足音に注意。2人の安眠を妨げぬように───と、2人の囁き声。囁きの中に先ほどまで主人公の思考を支配していたターゲットの名前が。静止。テントの直前で息を押し殺す。

召喚士ヒカール:『禁呪を使いまくるために自分の命を絶ってアンデッドになったなんて…。闇の司祭コマーツは一体、どんなヤツなんでしょう…』

剣士マドーカ:『闇の者、禁じられた扉を開き、破滅へと導く…か…』

召喚士ヒカール:『黒い司祭服を着て禁呪を使うコマーツがその闇の者にあたるのでしょうか?。だとしたら…』

剣士マドーカ:『………………………』

 同じ事をヒカールも危惧している───マドーカは思う。アイツのあの黒い司祭服───魔導を使う者は扱う魔法に関わらず、黒以外の色を基調にした司祭服を着ている。それは司祭服に使われる魔絹にいかな染料をもってして黒の染色が施せない、という理由から。司祭服に黒の模様付けをする際は、黒で染色した魔絹以外の糸により刺繍するのが通例。なのに、アイツのは───黒い魔絹でできている。闇の司祭コマーツを象徴する着衣と噂される黒い司祭服と同じ───。おかげでアイツをコマーツと勘違いした盗賊やならず者が恐れをなして逃げてゆく始末。

召喚士ヒカール:『こっそりブロウネイルの人達に訊いたんですけど、ゲノマトランスは禁呪じゃないかって。禁呪だとすると、使うたびに生命力を削られて寿命が縮まってしまいます…。3日も寝込んじゃったくらいですから…』

剣士マドーカ:『………………………そうね…』

 ゲノマトランスは恐らく古に封印された禁呪の1つ。人間を人間以外の生き物へと形態変化させてしまう威力、使った者を3日行動不能にしてしまうほどの負担。今、ゲノマトランスについてわかっている事はそれだけだが、まず禁呪に違いあるまい。3人の間にむず痒く横たわっている暗黙の了解事項。

召喚士ヒカール:『心配なんです!。コマーツはカズリア王国の聖騎士団をたった1人で壊滅させたってゆーじゃないですか!。とてつもなく強いんですよ!。だから…きっと苦戦すると思うんです。それで、ピンチになったらあの、ゲノマトランスを使ってしまうんじゃないかって…そ、そしたら…』

剣士マドーカ:『じゃぁ…使わせないようにアタシがコマーツを先にやっつけちゃうからさ。ね?』

召喚士ヒカール:『アタシだってがんばります!。盾になってもいいです!。あの人には無事で居てもらいたいですっ!』

剣士マドーカ:『ホントにヒカールは…アイツの事が好きなんだね』

召喚士:『そ、そんなハッキリ言わないでください…(恥)』

剣士マドーカ:『…そーだ!。これ。ヒカールにあげるよ(にっこり)』

召喚士ヒカール:『エターナル・ペンダント…だ、ダメです!。それは禁呪さえも封じる伝説の守護アイテムなんですよ!?』

剣士マドーカ:『盾になるんでしょ?。だったら、これつけときなさい』

召喚士ヒカール:『え、で、でも…』

剣士マドーカ:『ホラ、首だして。つけてあげる』

召喚士ヒカール:『……………………ぅ…』

剣士マドーカ:『こぉ〜ら、泣かないの……………………』

 

 主人公は足音を立てぬよう、そっとテントの傍から離れた。ゲノマトランスは禁呪───そうかも知れない。いや、自分はあの後3日も寝込んでいたと知り得た今では、きっとそうなのだ。真実を知る痛みは時に誰かの優しさによって、痛いけれどそれに勝る喜びを伴う事がある。その喜びをくれた───2人の少女。 主人公の5体に不思議な力が溢れてきた。

 帝都潜入は間近。闇の司祭コマーツとの決戦は過酷な戦闘になるだろう。窮地に瀕したら、自分はなんとしても、2人を守らねば───そのためなら鬼にも悪魔にもなれる。

 禁呪だって使える。

 たとえこの身果てようとも。

 

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 闇の司祭コマーツ: (くるみのシナリオに設定された)ラスト・ボスです。元になった御仁はもーおわかりですね。

 魔絹: (くるみのシナリオによると)この章では詳細が記されていません。

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