『ぬぁにぃ〜っ!。運命を変えるパワーじゃとぉ〜っ!。んなもん問答無用で却下じゃっ!』
『まなみの一大事なんですよ。おじいちゃん。このとーり。一生のお願い。オレ、なんでもするから。お願い…っ!』
『ダメじゃダメじゃ!。帰れ!』
『帰りませんっ!』
『ちっ…頑固になりおって。いつまでもそーしていろ。ダメなモノはダメなんじゃ!』
春日恭介は土間に正座していた。もう脚がしびれて感覚はなかった。ちょいとズルをしてパワーで身体を浮かしちゃおうかなーと弱気が彼の頭をかすめたとき、天の声が聞こえた。
『恭介や。ホレ、このクリスタルを持っていくとええ』
『おばあちゃん!』
『しっ。声が大きい…。ええか、このクリスタルには厄災の運命を封じ込めるチカラが宿っておる』
『あ、ありがとう。これがあれば』
『ただし!』
『ただし?』
『厄災から逃れた者はの、引き替えに、最も大切なヒトとの想い出を失う。きれいサッパリとな』
『最も大切なヒトとの想い出を…』
『運命を変えるには、それ相応の代償を払わねばならないのじゃよ。よくよく考えて使いなさい』
春日恭介は一握りほどの透明なクリスタルを見つめた。今、そのクリスタルは春日まなみの掌の上にある。
「というわけで、それを使えばレイジ君の病気は治せる。でも、引き替えに、彼の最も大切なヒトとの想い出を消してしまうことになるんだ」
「わかった…」
「まなみ…」
「うん。だいじょうぶ。ありがとう。お兄ちゃん」
「あ、そうそう。チケット売りとポスター張りは順調だってさ。こういう時のアイツらの行動力には恐れ入るよ」
「小松さんと八田さんね?」
「たんまり女の子を集めて萌えあがるそうです。動機は不純だけど頼りになるよ。あはは」
「まなみちゃんまなみちゃん、これ見てこれ見て〜。こんな髪型どうかなぁ、あでも、こっちもカッコいーかなー。レイジ君ってどんな髪型でも似合いそうだよねー。バッチシ決めたら早川みつるより断然イケルと思うのー♪」
「くるみ。プロのメイクさんが付くんだから、そーゆーのはプロに任せておけよ」
「え〜でも〜。アタシはまなみちゃんの意見を採用した方がいいと思うんだもん…。」
「くるみちゃんその本貸してくれる?」
「うん♪。アタシも手伝うね。お兄ちゃん、アタシ達忙しくなるから家の事はよ・ろ・し・く!」
「な…。ま、まかせなさい」
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