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Parallel Novel
「鮎川まどか。キミと歩く5月」
Chapter<8:今日はアタシの誕生日で。>

 5月25日。朝から雨。

 鮎川まどかは自分の部屋の窓を開け放ち、この季節の雨の日の匂いを胸一杯に吸い込んだ。薫風と混ざり合った湿度が彼女の体内に浸透してゆく。そして、今朝も電話が鳴るのだった。

 「………駅裏の地下鉄工事」

 「そーなのよ。昨日、早川みつるの罠だって教えてやったのに。まなみから電話があってさ、今日は日雇いの工事現場に行ったって。アイツ、まどかちゃんをビックリさせる、でも資金が足りない、だから、黙ってろって、まなみやくるみに口止めして、……………」

 「…ありがとう。あかねさん」

 春日あかねは『誕生日おめでとう』と言わなかった。それは、彼女の心遣いなのだ。そのセリフを一等先に言わなきゃならないヤツ…なにやってんだか。まどかは1階のリビングへ降りるとピアノの前に座った。

 Someday my prince will come........いつか、王子様が。

 この曲のタイトルを春日恭介は未だに『とっても、変なヤツが』と記憶している。まどかがそう教え、わざと原曲を留めぬほどに調子っぱずれな演奏をしてみせたからだ。彼がまどかを『鮎川』と呼び、まどかが彼を『春日くん』と呼び合っていた頃……………ホントはこんな風に弾きたかった。

……万華鏡をそんなに喜んでくれるなんて…ぷっ…いいのいいの…なはは………

……あ、そ、それ、お代…とっといて………

……ええー?!オレが穴空けるの?…鮎川の耳たぶ…プレゼントはしたけど…いくよ?…ああ、できない………

……オ、オレは…超能力者な…あ、あゆ?…………

……違うよ…まどかの誕生日は…オレが…いや、春日恭介が…鮎川まどかが生まれてきた事に感謝する日なんだ……………………


 まどかをビックリさせる。改めてそんな事してくれなくても、これまで、まどかは誕生日を迎えるたびに、彼から十分なほど驚かされてきた。

 5月25日は彼女の誕生日というだけでなく、2人にとって特別な日になっていた。彼女は時に思うのだ。今日に生まれたことを感謝しなくてはと。そして、王子様が春日恭介であった事に。ま、彼は白馬にも跨っていなかったし、華もしょってなかった。おっちょこちょいで、超能力者のくせに要領が悪くて、…エッチなくらい、まどかの事に砕身で…誰よりも…

 「あの…バカ」

 

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 まどかの誕生日: アニメ版には、まどかの誕生日ストーリーがありません。なんてこった!。というワケで、原作漫画のストーリーを元に構成してみました。以下、恭介がまどかにプレゼントしてきたモノの設定です。

 ・万華鏡をあげた(16歳)
 ・2人で撮った写真をあげた(17歳)
 ・ピアスをプレゼントした(18歳)
 ・超能力者であることを告げ、ファーストキスをした(19歳)
 ・彼女が生まれてきた事に感謝する日なのだと告げた(20歳)

 万華鏡と写真については原作のイメージです。あの名場面を思い起こしてみてください。ピアスは背伸びをしてプレゼントしたけど、「じゃあ、春日くんが穴空けて」とまどかに言われ、穴を空けられずに今に至るという感じ。19歳の5月25日に『あの日』以来続いていた『ひかるとファーストキスをしてしまった』わだかまりが解け、2人はファーストキスをした。その際、恭介がまどかに超能力者であることを告げているという設定。20歳の5月25日は上記の箇条書きのような出来事があったという設定です。

 以上の設定をふまえ、キミの想像力で2人の秘められたストーリー・ディテールを思い描いてみてください。

 いつか王子様が: あの名曲。過去、まどかが恭介にわざと「アウトしまくった」演奏をして聴かせた。その際、まどかが「この曲はね、“とっても変なヤツが”ってゆータイトルなんだ」と教えた。恭介はそれを信じ、今も疑っていないという設定です。

 

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