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「鮎川まどか。キミと歩く5月」

Chapter<4:カレに逢いたいので。もぐ。>

 翌日。

 鮎川まどかと春日あかねは大学近くのシーフード・レストランでランチをしているところ。他の客がいないバルコニーのテーブルに腰掛けた2人。穏やかな日差しを受け、真っ白いテーブルクロスの陰が、5月の微風でフロアに揺れている。本日のメインディッシュはとーぜん!今日も大学に姿を見せない春日恭介の料理法。

 「2日も休んでアイツ、まどかちゃんに電話の1本も入れられないのかしら。ったく、ズボラにもほどがあるわ」

 「…っとに!。(グサッ)」

 「あはは。お仕置きはそのカルパッチョみたいに、グッサリ串刺しね?」

 「ううん、こんなモンじゃないわ。こうよ。(グリッ)」

 あかねにはまどかの仕草が可愛らしく思えた。まどかの手に握られたフォークが皿と摩擦音を立て、あかねの目の前で不作法をはたらいている…戯けた仕草…それは、まどかがあかねに少なからず、心を許している証なのだ。あかねは過去、まどかが食事のマナーを破戒する場面に遭遇したことがなかったし、今の今まで想像もつかなかった。カルパッチョのタコが春日恭介に見えてしまう、微笑ましい…まどかの不作法。

 「ほーぉぇ(そーよね)。もぁ(まあ)、はやはぁひふぅひはいぁ(早川ミツルみたいな)、ひはほほぉひへひへぉ(下心ミエミエの)、…もぐっ。マメ男ってのよりはぁ、断然マシだけど」

 「はやはぁひふぅ?(早川ミツル?)」

 「そう。先週、正門のところで声かけられたんだ。ペッカペカのBMWの助手席に、まどかちゃんくらい髪が長くって、サラサラ髪のぉ…なんたらとか言う新人のアイドル乗せちゃってさ。とっかえひっかえマメなヤツ。んで、キミは春日のいとこだろ?、恭介は何処にいる?、いいプロポーションしてるじゃないか、深夜番組出てみない?、なんて、粉かけてきたのよ」

 「相変わらずの、スケコマシか…」

 「そ。だから、ドアに蹴りを入れてやったわ。ベッコリへこんで、ざまーみろ!」

 共通の敵?を見いだし、会話内容がエスカレートする2人。実は食前酒に赤ワインを1本空けていた…なーんて事は店の人しか知らないひ・み・つ。彼女たちの頬がほんのり赤いのは高揚した気分のせい、午後の講義に支障はない、酔ってなんかいませんよー、そういう事にしておこう。ね。

 

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 まどかとあかねのランチ: インフォーマルなランチスタイルを許しあってる2人の関係を学外のシーフード・レストラン(イタリアン)に持ち込んでみました。本文中での2人は昼間からアルコールを飲んでますが、ワインなど2人のとってはジュース同然という設定です。

 粉をかける:(嫌悪の意味を含んだ)アプローチ、モーションをかける。探りを入れるなど。

 ペッコリへこんで: フツーの女の子が蹴ったくらいで、ベッコリへこんだらクレームものでしょう。まどかやあかねに蹴られたら…知らまへん。

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