春日恭介が早川ミツルのBMWから開放された頃…彼が通う大学の構内には彼の登場を今か、まだか、何かあったのかしら、もうお昼だよ?と待っている彼女の姿がある。
「まどぉ〜〜〜か、ちゃん♪(抱き)」
「あ、あかねさん!」
「あっれー?。今日は専属ジャーマネの恭介が見あたらないわね。いつもなら、『くっつくなぁ、離れろぉー!』ってウッサイのに」
「遅れても2講目までには顔出すんだけど。今日はまだ来てない…みたいなんだ」
「で、心配になってきた。それでそんなに物憂げな顔しちゃってる。ん?」
「え、あ…………あはは」
「心配ない心配ない。アイツなら、そのうち『ごめ〜ん、まどかの夢見てたら寝坊しちゃってさ。なはは』とか言いながら顔出すわよ。それよっかさ、ウェーブかけたでしょ?。髪の毛!(んー、どれどれ)」
「うん。軽くだけど」
「ゴージャスよ!。“まどかちゃんマニア”のアタシには堪えられないわぁ〜。恭介のヤツはなんて言ってたの?。ま、アイツのことだから『ナチュラルが一番なんだー!。うわぁあ』なーんてお堅いこと言っちゃってるんでしょ?」
「昨日かけたばっかりだから…まだ、逢ってないし」
「じゃあ、アタシの感想が一等先だったってワケ?。あ〜ん、ごめん。ごめんネ、まどかちゃん。アタシってホント気が利かないヤツ」
「え?。いいの、いいんだってば。特に意味なんて無いんだ。うん」
意味がないハズはなかった。その事にあかねが気付いたように、恭介だって気付くハズなのだ。一昨日、恭介の部屋で彼が隠し損ねた男性誌を見つけ、彼の好みは調査済みなんだから。
『違うってば。もし、髪型変えるってゆーなら、この雑誌に載ってるどのスタイルにしても似合うよ、って言いたかったんだ』
『ほぉ〜。じゃ、こーゆー髪型にしちゃってもいいんだ?』
『え…そ、それは短すぎ…んと、(パラパラパラ…)これとかいいんじゃないかな』
『あ。ページの端っこに折り目なんか入れちゃってさ…ふ〜ん、171センチ、92、55、94かぁ。…オカズにしたでしょ?』
『なな、なに言ってんだ!。してないよ!』
でも、彼はここにいない。
まどかが一番期待しているリアクションを持っているだろう彼は。
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