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Parallel Novel
「新鮮直送!深まる季節、2人のお味は?」
Scene<6:アバカブ、大学帰りの恭介、夕方〜>

 

 「はい、これ、残り物だけど」

 「新しいメニュー…ですか?」

 「そう、このシーズンだけね。感想を聞かせてくれると嬉しいな。餓死寸前の春日君?」

 「マ、マスタぁ〜、…まいったなぁ」

 
 それは、毛ガニのむき身が入ったクリームスープで。
 今頃、まどかは北海道で新鮮な毛ガニなんかに、舌鼓を打っているのかなぁなんて連想しつつ、僕はまどかと毛ガニを食べた時のことを想い出した。

 「ねぇ恭介。いつまでカニさんと、睨めっこしてるつもりなの? 早く食べないと冷めちゃうよ」

 「いやぁ、どこから分解すればいいのかなぁ〜と。うぅぅん」

 「食べたいところからに決まってるじゃない」

 と、まどかは甲良の部分をカパッと取り外し、左手に甲良、右手にスプーンを構えて、悪戯っぽい瞳をした。甲良はつまり、カニ味噌が入っている部分であり、そこを食べなきゃ毛ガニ食べる意味なんて無い!(と僕は思っている)。

 「ここ、も〜らい。残りはぜぇ〜んぶ、恭介が食べていいわよ」

 「そ、そりゃないよぉ、『半分コしよっ』て言ったの、まどかじゃぁぁぁん」

 「いつまでも迷ってる春日恭介君を助けてあげたの」

 「そんなぁ」

 「あはははは、冗談だってば。 ハイ、あ〜〜ん」

 まどかが僕の口に運んでくれたスプーン…今、僕が1人で口に運んでいるスプーン。

 同じカニなんだよなぁ?


 「春日君、電話。小松君から」

 「小松?」

 こういうときの嫌な予感というのは、予知夢なんかより、はるかに的中率が高く…。

 「か、春日か?。オマエ、ちょっと今から合コンに参加してくんない?」

 ホラ、当たりだ。

 「座って飲んでるだけでいいから、な、頼む。オマエの大学の男がいないと、短大のお姉ぇーさん達が逃げっちまいそぅなんだよ」

 「イ・ヤ・だ」

 「なぁ、つれない事言うなよ〜。そ、そうだ! オマエの大学にオレの知り合いの後輩がいるからさ、そいつにオマエの講義、代返させるからよ。な? それで、手を打たないか?」

 ったく、つくづく調子のいいヤツだ!と…

 でも、小松との取引に応じちゃった僕は、合コンに参加してしまったのであり。半ばやけくそ気味に、短大のお姉さん達と盛り上がってしまっているわけで。

 こんなところを、もし、まどかに見られたら…ああ、オレって。

 

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