高台。この島をぐるり360度一望にできる場所。ここならばきっと遠くからでも見つけることが出来る…そんな想いから人魚の臥像は、この場所に建てられたのかも…。眩しそうに見上げる鮎川まどかである。
「たしかに、似てる…」
「お"ま"た"ぁ〜"」
「!!」
「いひひ。どう?、この人魚のお面。まどかに似てるだろ♪」
「ぜんっぜん、似てません!」
「つれないなぁ。手彫りのお面って一枚一枚、表情が違うからさ、決めるのに苦労したんだよ。ホラ、よく見てよ。このちょっと拗ねた表情が…」
「お若いの。ちょっと、待ちなさい」
美女に年齢は関係ない。
「あ、売店のおばーさん。もしかしてお釣り間違えちゃいました?。まどか。このおばーさん日本語ペラペラなんだよ。だから助かっ…んぐ?!」
油断禁物、キス一発。
「ん"ーーん"ーーーーっ、ぷはっ。な、な、な、な、」
「その女と結ばれなかったら、いつでもこの島に戻ってくるのよ。そうしたら、一緒に叫んであげる。“海のばかやろー”って。うふふふ」
「何するんですか、いきなり!。まままどか、オレ、全然身に覚えはないんだよ!。ホントなんだ!。何が何やらさっぱりなんだよ!」
解き放ってくれたのは、あの目眩に似た感覚。
それは、人魚として生きた時間の計算すら狂わせた魔術。
どうにもならない運命なのかも…でも、だから…。
「………な、なに笑ってる?。ちょっと…まどか?。ん?。ん?。どして?」
fin
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「で、コレをどうやって保管するつもりなの?」
「オレ考えたんだ。コレはまどかが持っててよ」
「あたしが?」
「そ。ネガもプリントも全部」
「全部?。……納得できる作品にならなかった?」
「いや、最高の作品だよ。肌身離さず持っていたいくらい。だから、まどかに…鮎川まどかに持っていてもらいたいんだ」
キンコーン。
「たぶん、新聞屋の集金。ちょっと待ってて」
ぱたぱたぱたぱたぱた
「我ながらホント、良く撮れてるよなぁ。やっぱ、1枚くらいは…」
ぱたぱたぱたぱたぱた
「大変!あかねさんだわ!」
「え!?。ままままままずい!。はやくはやく!」
「ここ!。ここにしまって!」
「あ!」
「い、いーから!。はやく!。ここが安全なんだから!」
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