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Parallel Novel
「心の結晶、ひかるの夢クリスマス」
Prologue<クリスマスイブ、続きは夢の中で>

 今日は小樽に引っ越してきてから2度目のクリスマス・イブ。
去年はクラスメートの彼氏が主催するプロムに参加してたっけ。
でも、今日は独り。

 中古の洋館。ひかるが引っ越してきた当初、「このむき出しの金属物は何の置物なの?」と思えたスチーム暖房のパイプ。今はパイプの中を流れる微かな蒸気の音が心地よく感じられ、時折、何かを想い出したように部屋の隅でキン、と鳴るのも生き物みたいで可愛いーと思えている。

 小樽の友人達は不思議!?って顔をしてた。
 どうして、プロムをキャンセルなのか、アンタがいないと盛り上がんないのよって…。幾らクリスマスをモチーフにした舞台台本を完成させるからって、何もイブの日に書かなくたっていいじゃない、んなもん、映画をパクッときゃいいのよ、演劇部の担任なんて宿題出すだけ出してどーせ、読みゃしないんだから、って。

 わかってる。 
 誘ってもらえるのは、とても嬉しいこと。
 でも、今日は特別なイブになりそう。
 独りで過ごすけど、独りじゃない。そんな…イブ。

 『お嬢さんは悪い娘みだいだから、イブの夜、プレゼントの代わりに1つだけ願いを叶えてあげよう。お詫びの印だわい』

 変なガイジンさん、…あはっ。

 『ぬぁに? この台本通りの夢を見させろ、だとぉ!?』

 「そーよ?。できないんなら、いいですけど」

 『ぞ、造作もない事よ!ふはは。 しかし、この台本はほとんど白紙ではないか…エンディングもないようだしのぅ』

 「そんなの、テキトーに足しといて。誰も傷つかず、ハッピーエンドで終わりさえすればいいの。サンタさんなんでしょう?」

 『…ぅ、わかったわい。お嬢さんの希望通りにしてやろう』

 「あはっ。じゃあね、メインはあたし。で、他のキャストはねぇ、…」

 ちょっと欲張りすぎたかな?。

 『おーい! イブの夜は早めに床についておくのだぞぉー!。わかったかぁー!』

 ひかるには先を急がなければならない理由があったから、キャストを告げると同時に走り出していた。だから仕方なく、怪しいガイジンはひかるの背中に向かって今夜の予告を叫んだのだった。

…結局。見失っちゃったなぁ。でも、…いいか。今はまだ、…逢えない…

 彼女は濡れた髪を拭くのを辞め、バスタオルをスチーム暖房の上に張った洗濯紐にバサッと掛けた。こうしておけば朝までにはパリパリに乾いちゃうのだ。

 『ひかるの髪ってサラサラぁ。いいなぁ栗毛』

 なーんて、友人達からはお世辞ともつかない賞賛を受けている。小樽に来て以来、伸ばし続けている栗色の髪。馬の毛並みみたいな言われ様だけど、今はちょっと自慢の髪。シャンプー後、水分を拭き取る手間が増えたのも今は気にならない。毛先が肩胛骨の辺りをくすぐって、それが気持ち良かったりするのだ。伸ばし始めた理由、それは髪の長い彼女、…姉と慕った人の存在に近づきたかったのかも知れない。

 「さてっとぉ〜、台本を完成させるぞぉ」

 後は部屋の温度に任せよう。ベッドに潜り込み、枕を引き寄せた彼女は、寝付くまでの間、事の経緯をもう一度おさらいしてみるのだった。

 

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