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Parallel Novel
「心の結晶、ひかるの夢クリスマス」
Chapter<5:マジ?、コメディーじゃないスカヤ!?>

 「ひかる!」
 「ひかるちゃん!」

は?

 「なに、ボ〜っとしてるの?。あと、一軒で終わりなんだから気を引き締めて」

 「どうしちゃったんだい?。ひかるちゃん」

 まどかと恭介の目線がひかるを真っ直ぐに見つめている。さっきまでは第3者の視点からひかるは夢を眺めていた。自分の姿も自分が出演した映画を鑑賞するような気持ちで傍観していたはずだった。でも、今は違う。ひかるの意識自体が夢の中のひかるに取り込まれ、当事者になっているのに違いなかった。場面は夜。カツサンドバーガーも3人の微笑みもそこには無い。

 ひかるはまどかからサンタの帽子と付け髭を取りなさい、そんなの付けてたら的になっちゃうよ、と、たしなめられた。付け髭を取るとき頬にピリッと痛みが走った。だから、感覚も取り込まれていると思ったのはたぶんアタリだ。

 「なぁ〜んかこの家、様子が変ねぇ…」

 「鮎川!…ほら、納屋の横。あのスノーモービル」

 「…ダッシャー。ゆ、勇作…くん」

…わかった!。アジトにいた勇作は先に捕らえられちゃっていて、もうアジトに戻れない。そーゆー展開なのね。よーし、それなら。

 「勇作ー!、今いくからねー。 泣かないで待ってるのよー♪」


 「バカ! 頭さげて!」
 「ひかるちゃん!」

 3人は除雪作業のあと出来る小さな雪山の陰に身を屈めていた。ひかるは身を乗り出し手を振ったのだ。何をしてもハッピーエンドで終わる、そんな期待とここまでのアクション・コメディーっぽい展開がひかるの頭にあった。だから、少しくらい茶目っ気を出してもよい場面だった。

 パンパンッと乾いた音。
 刹那、まどかがひかるに自分の身体を浴びせて押さえ込む。

 「ひかる、怪我はない!? あっ…痛」
 「鮎川! あぁ、血だ…ぁぁぁぁ」

…え?。まどかさん、撃たれた?。アタシの盾になったの?

 銃声のした方角では、『この調子の悪いスノーモービルに乗っていたオマエらの仲間のように蜂の巣にしてやるからさっさと出てこい!』と、まどかを撃った賞金稼ぎ達が喚いている。ってことは、勇作の出番はもう無い。でも…。

 ガンガンガンガンガンッ!
 恭介がヴィクセンから外してきたM240をところ構わずぶっ放し始めた。彼は涙声になっている。

 「ぅぅぅぉぉぉ、よくもよくも…鮎川を! わぁぁぁああ!」

 何かが割れる音、壊れる音、そして、爆発!。勇作のダッシャーに命中し、ガスリンに引火したのだった。

…マジ?、実弾!?。

 「春日君、やめて! やめてぇー!」

 気が狂ったように恭介へ飛び付くまどか。もんどりを打って倒れる2人。まどかは仰向けの恭介に跨り、バチッバチッと平手打ちを浴びせ始めた。怪我をしている自分など忘れてしまったように力強く。

 「こんなの、許さない、ダメよ!、春日君には、させない!、目を覚まして!」

 「ご、ごめん…鮎川。約束、破るような事、2度としないから…ごめん」

 恭介は正気を取り戻したようだ。まどかも、怪我をしている自分に気が付き、恭介に抱きかかえられている。ひかるも先ほどからの目まぐるしい展開に、遅ればせながら馴染んできた。

 「ひかる、…様子を見て。誰も死んでない?」

 この展開でもサンタ盗賊の掟は継承されているようだった。しかし、実弾が入っていた…どうやら、ひかるの思い描いた展開と食い違っているのは確かだ。ひかるはチラッと恭介が撃ちまくった方向を伺った。夜だし、もうもうと白煙が立ちこめていたから、本当はよくわからなかった。が、セリフはすぐに決まった。

 「全部ハズレみたいです。先輩って、ホントに下手くそですねぇ。あははは♪」

 「あぁ、よかった。鮎川…」

 まどかは薄く笑っただけだった。傷が痛むのだ。
 『何かあったら来なさい』と神父様から言われているから教会へゆこうと恭介が提案した。3人は混乱に乗じてその場を離れ、正確に言うと、離れる際、最後まで残っていたお宝、つまり『すご〜く、エッチそうなお宝ビデオ』を賞金稼ぎどものいる方向へ投げつけてから、教会へと急いだ。ヤツらがビデオに群がり取り合っている間は時間が稼げるハズ?。

 教会に向かう途中、ひかるはドンダーの横を走るキューピドの2人を見た。怪我を負ったまどかをロープで自分の身体に縛り付け、彼女を励ましながら彼が…春日恭介が必死の形相になって、キューピドを操っている。

…まどかさん、ヤバイの?。そーゆー展開なワケなの?。

 

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