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Parallel Novel
「夏の光!僕らは再び出逢う」
Chapter<9:僕らの光!、パーフェクト・オレンジ>

 

 「帰るのね…」

 まどかはそう言って少女を抱き寄せた。
 少女はまどかの耳元に口を寄せ、何事かを囁き、2人は僕の方をチラッとうかがったかと思うと、くすくすと秘め笑い。
 僕はパワーを使ってそれを盗み聞きしようとはせず。ただ、絵になりそうなその光景を脳裏に焼き付けようと。

 少女はまどかとの抱擁を終えると、僕に向かって悪戯っぽい瞳。…刹那、たぶん、条件反射ってヤツ…、助走をつけ、どぉ〜ん、と身体を預けてきた少女を、僕はよろけながらも何とか抱き留めた。

 「まどかさんを泣かせたら、しょーちしないから」
 「う、うん。約束するよ」

 彼女は『ほんとにぃ?』という瞳を見せてから、僕の左頬に唇を軽くあて…。僕は何となくだけど将来、彼女にひっぱたかれる頬はこちら側なんだなぁと…根拠もないのに思ったワケで。

 少女は僕らとの抱擁を終えると階段の縁まで歩き、階段の下のカズヤに合図を送った。

 いよいよだ。
 また、逢おうね。ヒカリちゃん…。

 彼女の背中は幾度か深呼吸、僕らにもわかるような仕草で時間を溜め、心を決めている。僕には今、少女が全身全霊で用意しているモノ、…せつないほど、わかっていた。

 少女の身体がピクリと揺れた。
 さあ、こっちを向いて。
 そして、…

 とびっきりの笑顔!

 …違う。
 
 今にも泣き出しそうな、それでも精いっぱい、明るく振る舞おうと踏みとどまっている笑顔。

 僕は瞬間、息が止まったと思う。

 何か言葉をかけたら、砕けてしまいそうなほど危うげで、キラキラとした想い出の結晶のような、…愛くるしい少女。


 …………そのまま…………………………………
 ………………仰向けに……………………………
 …………………少女の身体は……………………
 ………………………倒れ始め……………………

 「あぶないっ!」
 「ヒカリっ!」

 とっさに、僕とまどかは少女が階段から落ちてしまうんじゃないかと思え、彼女に駆け寄り、彼女の身体を掴み止めようと手を伸ばした。が…

 …眩しい光に………………………………………
 …………少女は……………………………………
 …………包まれて…………………………………
 …………泣き顔になってしまう前に……………
 ……………………………透きとおって…………
 ……………いっ…………………………た………。

 1秒でも経ったら壊れてしまいそうなほど、
 完璧なオレンジ色の空間を残して。

 

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