「…99っとぉ」
少女が最後の階段を数え終えた。
…僕は思わず…。
「えー!?。ひゃ、100段だろぉ?」
「99だったよ」
と少女。
「ほらね、やっぱり99じゃない」
続けてまどか。
「おっかしぃなぁー」
怪訝そうな僕を尻目に2人はころころと笑いあった。
まるで…未来の2人もそうであるかのように。
僕は『99.33333…』などと提案しそうになったけど。辞めた。この世界の僕がそれを言っては、未来の僕らの想い出が目減りしてしまう、と思えたから。
「ヒカリ!。迎えに来たよ!」
階段の下から響いてきた声。それが、初めて聞く変声期を過ぎたカズヤの声。
ちょうど90段目付近に立って、成長したカズヤが僕らを見上げていた。今の僕と同じくらいの年齢だろうか。ただ、僕の知っているやんちゃなカズヤとは著しく雰囲気が異なっており、落ち着いているというか、今の僕が並んで立ったら僕の方が見劣りしちゃうというか、あか抜けたクールガイって感じで。
『気が付いていると思うけど、今朝2人にかかった電話は僕とヒカリの仕業なんだ。だから、まどかさんにはそう伝えておいて。それから、ヒカリのテレパスは一方通行だからね。安心した?』
少女との不思議な出逢いを演出してくれたことに感謝しつつ、このカズヤはたぶん、時代を超えて人の心が読めちゃったりするのに違いなく、それはそれで気苦労も多く、大変だろうなぁと。 現に今も、こうやって、少女の手助けに駆り出されているのであり、僕はなんだか申し訳ないような気がした。
ありがとう。カズヤ
『不都合が起きないようにやっておくから、あとの事は心配しないで』
カズヤは僕に思念を送りながら、右手の親指を立て『了解?』という仕草…。
………僕らはお別れの時が来たのを知った。
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