>>あ、みなさんこんにちは。
街路樹に柔らかな若葉が生え揃う季節。
鮎川まどかの21回目の誕生日まであと3日、
「おい、おいってば!。ったく、ボケぇ〜っとしやがって。おい!」
プレゼントを受け取ったときの彼女の表情をあれこれ思い描きながら、5月の清々しい空気の中を歩く、春日恭介、20歳なのです。
…………………………な〜んちゃって。
パ、パァーン!
?!
「やっと気付いたか。一般ピープルの春日恭介」
「は、早川ミツルっ!!」
「バカ!。フルネームで叫ぶな。ここじゃマズイ…乗れ!」
「悪いけど、これから講義なんだ」
「んなもん、トバしちまえよ。大事な話があるんだ」
「大事な?」
「ああ、オマエとまどかの事についてさ。コイツは一大事だぜ。どうする?」
BMWの運転席には元アイドルの肩書きを持つ男。開け放した歩道側の窓枠に肘を乗せ、サングラスの奥から余裕の眼差しを恭介へ投げている。BGMには『逃げ場なんてないぜぇ〜、わかっているのさ〜、ベイベぇ〜』と、彼がアイドル時代、女の子をきゃぁきゃぁ言わせたであろう、無責任なヒットナンバーが似合いそうな、やめてほしいような。
大学の正門まであと数10メートル。その地点で春日恭介の5月は途切れた。彼に『フツー』の大学生活を送らせてやろうという人間はいないのだろうか?。
ブロロロロロォ〜
>>一大事と言われちゃ、この春日恭介、乗り込むしかなかったワケで。ああ、講義が…怒るだろうなぁ…。
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